みなさんはリトアニアで話される言語がリトアニア語だというの(もちろん?)はご存知かと思いますが、実はリトアニア国内では他にも話される少数言語があるということはご存知でしたでしょうか? その一つにサモギティア語があります。いまいち聞き慣れない名前だと思います。別の言い方ではジェマイティヤ語とも言います。リトアニア語ではŽemaičių kalba, サモギティア語(又はジェマイティヤ語)ではŽemaitiu kalba)と発音します。

ジェマイティヤってなんやねんって思うでしょう。ジェマイティヤとはリトアニアの地方を指します。主にリトアニア北東部のことをジェマイティヤ地方と言います。その地方の最大都市はシャウレイです。シャウレイは十字架の丘が近くにある北部のリトアニア第四の街ですね。ただクライペダを含めてそこが最大都市だと言う意見もあります。ですが、ジェマイティヤの文化的中心都市はリトアニア北西部に位置するテルシェイ(Telšiai)と言われています。ジェマイティヤ語は主に北部、南部、西部方言に分かれているのですが、クライペダで話されていた西部方言は今は死語になっています。

で、ジェマイティヤ語はリトアニア語とどう違うのでしょうか。

まず、このジェマイティヤ語はリトアニア語の方言だと一般的には言われているのですが、リトアニア語しか知らない人がジェマイティヤ語話者と意思疎通を図ることは難しいと言われています。

そして、ジェマイティヤ語の発音とアルファベットはリトアニア語と少し違います。ジェマイティヤ語にはリトアニア語にはないā, ē, īなどの長母音があります。バルト三国に詳しい方はお気付きかもしれませんが、ラトビア語にもこの長母音がありますね。それもあってか、ジェマイティヤ語の発音はどこかラトビア語のように聞こえる気がします。

上記の二つに加えて、文法も多少違いがあります。例えば、双数がしっかり残っている点。双数とは、私達二人とか彼ら二人という風に二つのものを表す形のことを言います。リトアニア語にもあるのですが、私達二人、君たち二人、彼ら彼女ら二人を表すものぐらいしかありません。つまりほぼ残っていません。それに加えて、ジェマイティヤ語では格変化もリトアニア語よりさらに一つ多いです。格変化とは名詞や形容詞の形が方向や場所などを表す時に変化することですね。リトアニア語ですら7格もあるのに、ジェマイティヤ語では8格もあるのです。その8格目は入格と言います。入格はどこかに入る際に使われます。

リトアニア語とジェマイティヤ語を比べてみましょう。

リトアニア語 Sveikas(こんにちは)
ジェマイティヤ語 Svēks

リトアニア語  Kaip? (どう)
ジェマイティヤ語 Kāp? 

リトアニア語 Kalbate angliškai?(英語を話しますか)
ジェマイティヤ語 Ruokounaties onglėškā?
 
どうでしょう? 特に最後の文の話しますかの部分がまったく違うのが驚きです。これでは意思疎通を図るなんてできないですね… 

ジェマイティヤ語は今はほとんど話せる人も書ける人もいないらしいです。ちょっとずつでも話せる人が増えればいいなと思います。

ジェマイティヤ語がどんなのか気になる方は前の記事にその言語の音楽について書きました。 
それとなんとウィキペディアもジェマイティヤ語で書かれています。